務台政務官、被災地だけではなく全国からの批判の声をうけ、与党内からも許しがたいという声があがって、さすがにそれらに耐えられず政務官については辞表をお出しになったとか。ついでに議員もお辞めになったら? その根拠を次にお示ししますから。
昨日紹介した、昨年12月の務台議員およびその応援者の書き込みは、同時進行した町と教育委員会による公民館使用許可取り消し問題を考える上で、大変貴重な資料となっています。
お二人の主張は、ほとんど池田町・教育委員会(町当局と書く)の見解と同じであり、12月1日の町当局の庁議でも務台氏の出席要請を断ったことが公民館側から報告されているという事実と合わせて考えると、ここで書き込まれた主張を検討しておくことはあながち無駄なことではないでしょう。むしろ、長靴事件やそれによる政務官辞任以上に重要な問題をはらんでいるからです。
集会に出席させろ、いやそれは困るという部分はとりあえず脇に置くとして、務台氏と平岡氏の主張はつぎのようになっています。
@「町民と政党のつどい」という標題は全政党に開かれていると思わせるが実際はそうではないのだから、中立を装うものであって、欺瞞である。
A政治的に一方に偏った政治集会には公民館は使えない。中立を装って公民館に使用許可申請をしているのだから、公民館は騙されている。
Bつどい実行委員会は、誓約書に政治目的ではないと書いたと聞いている。これは明らかにウソなのだから問題。
C公民館の利用原則は「非営利、政治的中立、宗教的中立」。今回の実行委員会のは公民館の(政治的)中立性に違反している。
D問題は、国の基準ではなく、池田町の取り扱い基準に照らしてどうかということである。
@についてはすでに書き込みの中で反論されています。務台氏はチラシの「政党」という部分だけを取り出して「欺瞞」とまで言っているのですが、
チラシそのものをご覧になれば彼の読解力のなさ、あるいは為にする「言いがかり」であることがすぐに分かるでしょう。彼はこの集会に参加してどうしようというつもりだったのでしょうか。
ACは同じ内容で、要するに公民館の使用基準に反するということを言いたいのです。
実は、この点について、12月5日、抗議に赴いた実行委員会のメンバーに平林教育長が次のように答えていました(収録DVDより)。
(社会教育法第23条について)私たちの考えと実行委員会の考えとがちょっと違ったので、そこはなかなか相容れるものがなかったと思います。
私たちのいままでの(社会教育法第23条の)考え方は、公民館というのは職員も守らなければならないし、借りていただく皆さんにも是非ルールを守ってほしいという解釈できましたので、当然公民館長が政治的中立を乱すものはまずいと思いますし、また借りる皆さんもやはり政治的中立のなかで(公民)館を使っていただきたいと思っていましたので、今回チラシを見せていただいたときに、少し偏りがあるかなと感じたものですから、話をさせていただきました。すでにお分かりですね。言い分は務台氏や平岡氏も教育委員会も全く同じです。
(ア)社会教育法第23条は、公民館職員も利用者も守るべき基準を定めている。
(イ)したがって、利用者も政治的中立性を守るべきであるという見解です。
これがどんなに見当外れで誤った見解であるかは、過去に何度も触れてきました。社会教育法の解釈から「公民館を利用する者が政治的中立を守るべきである」というのは驚くべき議論です。
もしこのことをまともに考えているなら、先の「杉尾秀哉参議院議員国会報告会」は間違いなくこの政治的中立に違反します。よって、公民館使用を拒否しなければならなかったはずなのです。しかし、そうはできなかった。そりゃもう、国会で追及されちゃいますからね。
政治的中立とは何か。公民館運営者が、特定の政党だけに加担するような運営をしてはならないという意味での「政治的中立」ならばまだ話はわかります。しかし、利用する側の人間に政治的中立を求めることは、明らかに思想信条の自由の侵害です。利用者は憲法を外に置いて公民館に入れと言っているのと同じです。教育長は、公民館運営にあたっての「政治的中立性」を一般住民に意図的にすり替えて要求しているのです。
つまり、書き込んだ方も町当局も、「政治的中立」とは何かを全く分かっていないことを露呈しただけじゃありませんか。あるいは、「政治的中立」を私たちに施設を利用させたくなかった口実にしたということに過ぎません。こんな理屈、とても議論に耐えられるものではありませんね。
Bの「誓約書に政治目的ではないと書いた」・・・ですか。「語るに落ちる」とはこのことです。どこからその情報を仕入れたのでしょうか。実行委員会の一部のメンバー以外には知らないことですし、そもそも「誓約書」とは何でしょうね。もし万が一「確認事項」を意味するのならこれは重大問題です。現職国会議員で政務官にそのような文書を示した公民館職員もしくは教育委員会職員が存在するということになりますからね。国会で追及してもらわなければならない、長靴事件どころのさわぎではない不当介入事件ということになります。
言うまでもありませんが、私たちは公民館利用にあたって「政治目的でない」などと約束するわけがありません。なぜこんな書き込みをしたのか。この点も大きな疑惑です。なぜなら教育委員会が30日夕方に示した「確認事項」には「選挙に関する話題。議論は一切しない」という一項が入っているからです。「政治目的ではないと書いた」とする根拠はそれしか考えられないのですから。
しかも「誓約書」のことを口にしているのは11月30日なのです。だから務台氏の残したこれらの書き込みは実に面白い。踏み荒らした足跡をたくさん残していただいたということですよ、務台議員。国会でこの点、問いただしてもらいましょうか。
D「国の基準ではなく、池田町の取り扱い基準に照らして」はどうか。池田町の取り扱い基準も
ウエブ上で明らかにしています。
ご覧の通り、政党について規定しているだけで、一般町民団体についての規定はありません。
したがって、この事案以前は問題なく「戦争法に反対する池田町民の会」の集会などで公民館を利用してきたのです。
務台氏はこのことを全くわかっていません。町当局は今回なぜあえて「池田町の公民館規定に抵触しない」ではなく「該当しない」として、「確認書」まで書かせようとしたのか。この点だけは務台氏の理解を超えるものでした。従って全くトンチンカンな書き込みをしたことになりますね。
それは、やはり「この種の政治的な色彩をもった集会を公民館で行わせたくなかった」ことに尽きます。野党が参加する集会はダメだが、現職国会議員の集会は許可というちぐはぐな対応のうちに務台氏や町当局の混乱が示されているといってよいでしょう。
なんだかんだと言っても、自分の選挙区でこのような集会が行われるのはどうにも許せなかった、それに尽きるんじゃありませんか。
務台氏の思いに添ったのかどうだか知りませんが、町当局が最後に「根拠」とするのは、「考えが違う」と称する社会教育法第23条の解釈なのです。この点は、何度も書いたように、昨年の文科省の通達で間違いははっきりしています。
ところが、弁護士のみなさんは、そこすら問題にしていません。公民館の使用許可取消処分は明らかに日本国憲法第21条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」に違反すると断言しているのです。裁判をすれば必ず勝てるとまで言っているのですから。
社会教育法第23条の条文にこだわる限り、町当局は「見解の相違」にしがみつく恐れがあります。その点は大変重要な争点ではありますが、この事件は明らかに
憲法違反の行政処分です。私たちはやはり、基本的人権としての「自由権」を前面に押し出して、今回の問題に光を当てていく必要があると思います。